「時局講演」
国民一人当たりのGDPはもはやアジアでトップではなくなりつつある。家電製品などでも日本ブランドの存在感が低下してしまった。
かつての円安時には、日本車などの輸出増もあり、中小企業もある程度の利益を確保することができたが、現在円安は日本経済にメリットはない。円安信仰を捨てなければならない。
この30年で国家予算は36兆円増えたが、うち24兆円は社会保障の増加で、10兆円は国債費の増加。さらに地方交付税が一兆円増えており、社会保障費以外の一般歳出は、この30年間で、実質1兆円程度しか増えていない。
今後の日本は、ものづくりだけに固執せず、新しい産業を創出するために研究機関、大学の力を上げるなど、抜本的な改革が不可欠だ。
昨年は、企業のテレワーク推進の影響で、首都圏から地方への人口流出が増えた。日本中どこででもテレワークが可能になれば、通勤時間がなくなり、親世代の協力を得ながらの子育ても可能となる。テレワークは、地域社会、地域経済の活性化につながる。現在、日本中どこでもテレワークができるように政府も5Gのネットワーク拡充を推進しているが、残念ながら霞が関自体でテレワークが進んでいないのが実状。
ポストコロナの日本社会では、東京一極集中ではない、新しい日本の社会の在り方がつくることができるはずだ。
DX、GX、そして新しいサービス産業の創出によって日本経済を筋肉質にしていくことがわが国の喫緊の課題だ。さもなければ日本は先進国から滑り落ちてしまう。アジアの優れた人材にコロナ後に日本に来てもらうためにも、規制、税制を変え、最先端のものを創出できる国にしなければならない。
私が規制改革担当相時代に、オンライン授業についてはそれまでの規制を撤廃した。オンライン授業の推進で、より質の高い授業の提供が可能になり、担任の教師は教えることや授業の準備から解放され、ティーチングから一人ひとりの生徒に寄り添うコーチングに集中できるようになる。
安全保障に関しては、国際社会は、ロシアの極悪非道な戦争犯罪を許すことはできないということを明確に示す必要がある。ロシアへの経済制裁は、たとえ返り血を浴びても実行せねば、東アジアに飛び火する可能性がある。万が一、同様の事態が東アジアで起こった場合、中国への経済制裁を想定したサプライチェーンの再構築の可能性も検討していく必要がでてくるだろう。